ベトナム旅行のお土産や、現地のスーパーマーケットで見かける黄色いパッケージのお菓子。

「バインダ ウサイン(bánh đậu xanh)」と呼ばれるこのお菓子は、ベトナム北部発祥の緑豆で作られた伝統的な銘菓です。

日本ではスペースを入れて表記されることもありますが、続けて「バインダウサイン」と読まれることも多いこのお菓子。

一口食べるとホロホロと崩れる独特の食感と、どこか懐かしい味わいが特徴です。

今回は、ベトナムのお茶文化に欠かせないこの緑豆ケーキについて、その正体や魅力、美味しい食べ方を詳しく解説します。

バインダ ウサイン(bánh đậu xanh)とは?基本情報を解説

名前の意味と読み方

まずはこの聞き慣れない名前について紐解いていきましょう。ベトナム語では「bánh đậu xanh」と表記します。読み方はカタカナで表すと「バイン・ダウ・サイン」となりますが、日本で紹介される際には「バインダ ウサイン」や「バインダウサイン」と書かれることが一般的です。

言葉の意味を分解すると、「bánh(バイン)」はケーキやお菓子、粉もの全般を指し、「đậu(ダウ)」は豆、「xanh(サイン)」は青や緑を意味します。つまり直訳すると「緑豆のケーキ」や「緑豆のお菓子」という意味になります。名前の通り、緑豆(ムング豆)を主原料としたシンプルなお菓子です。

どんなお菓子?ざっくり特徴

バインダウサインは、一辺が数センチ程度の小さな正方形のキューブ状をしているのが一般的です。最大の特徴はその食感で、口に入れると噛まなくても「ホロホロ」と崩れ、唾液と混ざってスーッと溶けていきます。クッキーやケーキのような焼き菓子とは異なり、粉を油脂で固めた落雁(らくがん)に近い形状をしています。

主原料である緑豆の粉に、砂糖と油脂(伝統的にはラード、最近は植物油も多い)を練り込んで型押しして作られます。非常に甘みが強く、緑豆の香ばしさと油脂のコクが感じられるため、ベトナムでは単体で食べるというよりも、濃いお茶と一緒に楽しむ「お茶請け」の定番として、また来客時のおもてなしとして親しまれています。

どの地域の名物?

このお菓子はベトナム全土で見かけますが、本場は北部に位置するハイズオン省(Hải Dương)です。「ハイズオンの緑豆ケーキ」といえば、ベトナム人なら誰もが知る特産品であり、高品質なバインダウサインの代名詞となっています。特に旧正月(テト)の時期や、帰省時の手土産、結婚式の贈り物など、ハレの日のギフトとしてもよく選ばれる格式あるお菓子でもあります。

バインダ ウサインの原材料と味の特徴

シンプルな原材料

バインダウサインの材料は非常にシンプルで、添加物などはあまり使われないのが一般的です。基本となるのは、皮をむいて粉末状にした「緑豆(ムング豆)」、甘みをつけるための「砂糖」、そして生地をまとめてコクを出すための「油脂」です。油脂には伝統的に豚の背脂(ラード)が使われてきましたが、近年ではヘルシー志向やベジタリアン、ハラル対応のために植物油を使用する製品も増えています。これらに加えて、風味付けのために少量の塩やバニラ香料、あるいはグレープフルーツの花の香りなどを加えることもあります。素朴な素材で作られているため、豆本来の味をダイレクトに感じることができます。

味わい・香り・食感

その味わいは、砂糖の甘さがしっかりと感じられますが、決してくどいわけではなく、豆由来の「優しい甘さ」が広がります。香りは、きな粉や炒った豆のような香ばしさの中に、油脂特有のまったりとしたコクが重なります。

食感は非常に特徴的です。指で強くつまむと崩れてしまうほど繊細で、口に含むと「サクッ」としたかと思えば、瞬時に「ホロホロ」と粉状に解け、最後はねっとりとしたペースト状に変化して消えていきます。口の中の水分を奪うような粉っぽさがあるため、飲み物なしで食べるのは少し大変かもしれません。しかし、そこにお茶を一口含むと、口の中で甘みが中和され、至福の味わいとなります。

日本のお菓子に例えると?

日本人にとって馴染みのないお菓子かと思いきや、実は食べた瞬間に懐かしさを感じる人が多いようです。例えるなら、和菓子の「黄身しぐれ」や「うぐいす餡」、あるいは「きな粉棒」や「湿り気のある落雁」に近い味わいです。あんこ文化に親しんでいる日本人にとっては、抵抗なく受け入れやすい味と言えるでしょう。ベトナム土産として渡した際に「和菓子みたいで美味しい」と喜ばれることが多いのも納得です。

バインダ ウサインの種類・バリエーション

プレーンタイプ(オリジナル)

最もポピュラーなのが、緑豆、砂糖、油脂だけで作られた「プレーン(オリジナル)」タイプです。余計なフレーバーが入っていないため、緑豆本来の素朴な香りと甘みをストレートに楽しむことができます。初めてバインダウサインを食べるなら、まずはこのプレーンタイプから試してみるのがおすすめです。金色のパッケージに赤い文字で書かれていることが多く、各メーカーの看板商品となっています。

味つき・アレンジタイプ

近年では伝統的な味だけでなく、現代風にアレンジされたフレーバーも数多く登場しています。例えば、南国の風味を加えた「ココナッツ入り」や、独特の香りが癖になる「ドリアン風味」、日本文化の影響を受けた「抹茶風味」などがあります。他にも、香ばしさをプラスした「黒ごま入り」や「ピーナッツ入り」など、地域やブランドによって様々なバリエーションが展開されています。食べ比べをしてお気に入りを探すのも楽しいでしょう。

箱入りギフト・個包装タイプ

お土産として購入する際、パッケージの種類も重要です。自分用やバラマキ用には、銀紙で包まれただけの簡易包装タイプや、袋入りのものが便利です。一方で、贈答用としては、龍や鳳凰が描かれた高級感のある紙箱入りや、しっかりとした缶入りの商品が選ばれます。中の小箱を開けると、さらに小さなサイコロ状の個包装が入っていることが多く、少しずつ食べるのに適した形状になっています。

バインダ ウサインはどうやって食べる?おすすめの食べ方

定番は「お茶請け」として

ベトナムでの最もポピュラーな食べ方は、温かいお茶のお供にすることです。現地では苦味のある緑茶や、香りの良いハス茶(蓮茶)と一緒に出されることがほとんどです。バインダウサインのしっかりとした甘さは、渋みのあるお茶と組み合わせることで真価を発揮します。日本で楽しむなら、濃いめに入れた煎茶やほうじ茶、あるいはジャスミン茶や烏龍茶などがよく合います。コーヒーの場合は、砂糖を入れないブラックコーヒーと合わせるとバランスが良いでしょう。

食べるときのコツ

食べる際には少しコツがあります。一口サイズに見えますが、そのまま口に放り込むと、粉が喉に張り付いてむせたり、口の中がパサパサになったりすることがあります。おすすめは、小さなキューブを指でつまみ、少しずつかじりながら食べることです。また、非常に崩れやすいため、手で持つ際や袋から出す際には、必ず小皿やお皿の上で扱うようにしましょう。ポロポロとこぼれた粉も、指ですくって食べるのがまた一興です。冷やすと油脂が固まりホロホロ感がアップし、常温だと香りが立ちやすいという温度による違いも楽しめます。

アレンジアイデア

そのまま食べるのに飽きたら、アレンジスイーツとして楽しむのもおすすめです。例えば、バニラアイスの上にバインダウサインを砕いてトッピングすれば、きな粉アイスのような和風テイストのデザートになります。また、生クリームとの相性も良いため、ケーキのデコレーションに使ったり、パンに塗って「緑豆あんトースト」風にしたりするのも面白いでしょう。日本茶やベトナムコーヒーと共に、「和洋越ミックス」なデザートタイムを演出できます。

バインダ ウサインの作り方の流れ(ざっくり解説)

基本の製造工程

工場や専門店での製造は、まず乾燥した緑豆を水に浸して柔らかくし、蒸したり茹でたりして加熱することから始まります。柔らかくなった豆を細かく潰してペースト状にし、さらに乾燥させて粉末にします。この緑豆の粉に砂糖と油脂を混ぜ合わせ、加熱しながら練り上げていきます。この工程で水分を飛ばし、独特の食感を生み出します。最後に型に入れて強く押し固め、冷ましてから一口サイズにカットし、包装して完成です。シンプルな工程ですが、火加減や混ぜ具合が職人の腕の見せ所です。

家庭で作るときのポイント

家庭で再現する場合は、皮なしの緑豆(ムングダール)を使うと、裏ごしの手間が省けて滑らかに仕上がります。練り上げる際の水分量と油脂の量で、「しっとり系」になるか「ホロホロ系」になるかが決まります。本場のようにラードを使うとコクが出ますが、日本の家庭で作る場合は、無塩バターやクセのない植物油で代用しても美味しく作ることができます。きな粉と粉砂糖を混ぜて油脂で固める簡易レシピなどもあり、意外と身近な材料で雰囲気を楽しむことが可能です。

バインダ ウサインはどこで買える?(ベトナム・日本)

ベトナム現地での購入スポット

ベトナム旅行中であれば、購入場所に困ることはありません。ハノイや本場のハイズオン省の土産物店はもちろん、バスターミナルの売店、ノイバイ空港やタンソンニャット空港のギフトショップでも必ずと言っていいほど売られています。また、Big C、Lotte Mart、VinMartなどの現地のスーパーマーケットのお菓子コーナーに行けば、地元価格で安く手に入ります。特に旧正月前になると、贈り物用の赤い箱に入ったバインダウサインが山積みになり、季節の風物詩となっています。

日本で購入する方法

日本にいながらバインダウサインを食べたくなった場合も、入手は比較的容易です。東京、大阪、愛知などをはじめとする各地のアジア食材店やベトナム食材店に行けば、「緑豆ケーキ」や「bánh đậu xanh」と書かれた箱を見つけることができるでしょう。また、カルディコーヒーファームなどの輸入食品店でも、ベトナムフェアなどの時期に取り扱われることがあります。近くに店舗がない場合は、Amazonや楽天市場などのネット通販を利用するのが確実です。「ベトナム 緑豆ケーキ」「バインダウサイン」などのキーワードで検索すれば、多くの商品がヒットします。

選び方のポイント

購入する際は、賞味期限と保存方法を確認しましょう。また、原材料表示を見て、油脂の種類を確認することも大切です。ラード特有の風味が苦手な方やベジタリアンの方は、植物油(Palmoilなど)が使われているものを選びましょう。甘さの度合いはパッケージからは分かりにくいため、甘さ控えめが好みの場合は、ネットの口コミやレビューを参考にしてから購入するのが無難です。

バインダ ウサインの保存方法と賞味期限

常温保存の基本

バインダウサインは水分が少なく、砂糖と油脂で固められたお菓子であるため、基本的には常温保存が可能です。直射日光や高温多湿を避け、涼しい場所で保管しましょう。未開封の状態であれば、製造から数ヶ月から半年ほど日持ちするものが多いです。パッケージに記載されている賞味期限を必ず確認してください。

開封後の注意点

個包装されているとはいえ、紙で包まれているだけのものも多いため、外箱を開封した後は湿気に注意が必要です。湿気を吸うとホロホロとした食感が損なわれ、ベタついてしまうことがあります。開封後は、ジップロックなどの密閉袋やタッパーに移し替えて保存し、風味が落ちないうちに早めに食べ切るのが理想です。

冷蔵・冷凍は必要?

基本的には常温で問題ありませんが、日本の夏場のように室温が高くなる時期は、油脂が溶けて形が崩れたり、酸化したりするのを防ぐために冷蔵庫で保存するのも一つの方法です。ただし、冷やしすぎると香りを感じにくくなるため、食べる少し前に冷蔵庫から出し、常温に戻してから食べると、本来の風味を楽しむことができます。

バインダ ウサインのカロリー・栄養と上手な付き合い方

緑豆ベースならヘルシー?

主原料である緑豆は、タンパク質や食物繊維、ビタミン類を含んでおり、漢方では体の熱を冷ます食材としても知られています。しかし、バインダウサインはそれと同量程度の砂糖と油脂が使われています。豆が原料だからといって低カロリーなわけではなく、むしろエネルギー密度の高いお菓子です。「ヘルシーだからいくら食べても大丈夫」と思わず、しっかりとした甘味菓子として認識しておきましょう。

食べる量の目安

小さなキューブ1つでも、砂糖と油が凝縮されているため、それなりのカロリーがあります。ついつい手が伸びてしまいますが、食べ過ぎは糖分・脂質の摂りすぎに繋がります。ティータイムに1〜2個程度をお皿に出し、たっぷりのお茶と一緒に時間をかけてゆっくり楽しむのが、このお菓子の粋な楽しみ方です。

甘いものとのバランス

バインダウサインを楽しむ日は、他のスイーツを控えめにするなど、1日の総摂取カロリーでバランスを取りましょう。また、合わせる飲み物は砂糖入りのジュースやカフェオレではなく、無糖のお茶やブラックコーヒーを選ぶことで、口の中もさっぱりとし、カロリーコントロールもしやすくなります。

Q&A|バインダ ウサインに関するよくある疑問

Q1. バインダ ウサインはどんな人におすすめ?

日本の和菓子、特に落雁やきな粉系のお菓子が好きな方には特におすすめです。また、あんこが好きで、しっかりとした甘さを楽しめる方にも向いています。ベトナムらしい伝統的なお菓子を試してみたいけれど、ドリアンや魚醤のようなクセの強いものは苦手、という方にとっても、安心してトライできる入門編として最適です。コーヒーやお茶を日常的に飲む方のお供としても重宝します。

Q2. 子どもでも食べられる?

はい、食べられます。唐辛子やスパイスなどの刺激物は入っておらず、豆と砂糖の優しい味なので、小さなお子様でも美味しく食べることができます。口溶けも良いので、喉に詰まらせる心配も比較的少ないですが、粉でむせないように飲み物と一緒にあげると良いでしょう。ただし、砂糖と油が多いので、あげる量には注意が必要です。

Q3. お土産に向いている?

非常にお土産に向いています。箱の中にさらに小箱が入っているタイプが多く、職場や学校で配るのに便利です。常温で持ち運びができ、重さもそれほど気になりません。味にクセがなく、日本人の口に合いやすいため、好みが分かれにくいという点でも優秀なお土産と言えます。

まとめ:バインダ ウサインで“ベトナムの素朴なティータイム”を体験しよう

「バインダ ウサイン(バインダウサイン)」は、緑豆の風味を最大限に活かした、ベトナム北部が誇る伝統銘菓です。

口の中でホロホロと崩れる儚い食感と、お茶の味を引き立てる濃厚な甘さは、一度味わうと忘れられない魅力があります。

日本の和菓子にも通じる親しみやすさがありながら、異国情緒も感じられるこのお菓子。

ベトナム旅行の際はもちろん、日本国内でも手軽に入手できるので、ぜひ温かいお茶を用意して、ベトナム流のゆったりとしたティータイムを楽しんでみてはいかがでしょうか。