ソンベ焼きとは?ベトナムの伝統的な焼き物について解説
ベトナム南部を訪れた際、多くの人がその愛らしさに心惹かれるのが「ソンベ焼き」です。
かつて南部の庶民の食卓を支えていたこの陶器は、素朴で温かみがあり、鶏や金魚、花などを自由に描いた手描きの模様が最大の魅力です。
最近ではホーチミンを中心に、そのレトロでどこか懐かしい表情がおしゃれな雑貨やお土産として注目を集め、人気が再燃しています。
一点一点が異なる表情を持つソンベ焼きは、まさに旅の思い出を持ち帰るのにぴったりのアイテムと言えるでしょう。
本記事では、その歴史から特徴、そして失敗しない選び方に至るまで、ソンベ焼きの魅力を余すことなく解説します。
ソンベ焼き(Sông Bé ceramics)とは?まずは基本をざっくり解説
ソンベ焼きは、ベトナム南部で古くから親しまれてきた陶器の総称であり、日本ではこの呼び名で広く定着しています。
そのルーツは、ホーチミンからもほど近いビンズン省周辺の焼き物文化にあります。かつて南部の家庭や食堂でごく当たり前に使われていたこの器は、気取らない日常の道具としての美しさを備えています。職人の手によって一つひとつ描かれる絵付けは、完璧に整いすぎていないからこそ、手仕事ならではの温もりを感じさせてくれます。
読み方・表記ゆれ
日本語では一般的に「ソンベ焼き」や「ソンベー焼き」と表記されます。ベトナム語での正式な表記は「Sông Bé」であり、カタカナで表すなら「ソン・ベー」という発音が現地での響きに近くなります。また、古い文献や専門的な紹介では、産地の名前を冠して「Lái Thiêu – Sông Bé(ライティエウ・ソンベ)」と表記されることもあります。これらの呼び名はすべて、南部ベトナムが育んできた誇り高い陶器文化を指しています。
「ソンベ」の名前の由来|実は“昔の地名”だった
「ソンベ」という名前を聞いて、それが何を指すのか不思議に思う方もいるかもしれません。実はこの名称は、かつてベトナム南部に存在した「旧ソンベ省」という行政区の名前に由来しています。
旧ソンベ省は、1997年に行政区画の再編が行われた際にビンズン省とビンフオック省の2つに分割されました。そのため、現在の地図上で「ソンベ省」を見つけることはできませんが、焼き物の名前としてその地名が今も受け継がれているのです。つまりソンベ焼きとは、かつてのソンベ省周辺で脈々と作られてきた南部陶器の総称であると理解すると非常に分かりやすくなります。
ソンベ焼きの歴史|いつ頃から作られてきた?
ソンベ焼きが歩んできた道のりは、ベトナム南部の歴史そのものと深く関わり合っています。
ルーツは17世紀の中国系移民の陶芸文化
ソンベ焼きの起源を遡ると、17世紀ごろにこの地へ移り住んできた中国系移民がもたらした陶芸技術にたどり着くとされています。中国の伝統的な技法をベースにしながらも、ベトナム南部の風土や人々の暮らしに溶け込んでいく過程で、独自の進化を遂げてきました。中国の洗練された美しさと、ベトナム南部の穏やかな感性が融合したことが、ソンベ焼き独特のスタイルの原点となっています。
フランス統治時代の影響も混ざり合った器
ソンベ焼きのデザインを詳しく観察すると、中国由来のモチーフだけでなく、フランス統治時代の影響と思われる意匠が混ざり合っていることに気づきます。色使いや曲線美の中に、どこかヨーロッパのアンティーク食器のような雰囲気が感じられるのはそのためです。こうした多文化が交差する「ベトナム南部らしいミックス感」こそが、デザインの面白さや奥深さを生み出しているのです。
1980年代以降に窯元が激減し「幻の陶器」化
かつては隆盛を極めたソンベ焼きですが、戦争や時代の変化、さらに後継者不足といった様々な要因が重なり、1980年代以降に窯元の数が激減してしまいました。一時は生産が途絶えかけたことから、アンティーク愛好家の間では「幻の陶器」と呼ばれることもあります。現在、市場で見かけるものは、当時の技術を継承した「復刻品」や、古い時代の貴重な「ビンテージ(古陶器)」として大切に扱われています。
ソンベ焼きの特徴|どんなデザイン・風合い?
ソンベ焼きには、他の陶器にはない独自の魅力がいくつも詰まっています。
① ほっこりする素朴さ&手描き感
ソンベ焼きの大きな特徴は、きっちりと整いすぎていない自由な手描き感にあります。職人の筆致がそのまま残るゆるい表情の絵付けは、見る人の心をほっこりと和ませてくれます。工芸品としての格式を持ちながらも、あくまで生活用品として私たちの暮らしに寄り添ってくれる、その絶妙な距離感がファンを惹きつけてやみません。
② 代表的なモチーフは「鶏・金魚・花柄」
代表的なモチーフとしては、鶏や金魚、そして色鮮やかな花模様などが挙げられます。これらは単なる装飾ではなく、中国の吉祥柄と南部の暮らしが混ざり合った独特の世界観を作り出しています。特に鶏のモチーフは縁起物としても親しまれており、どこかユーモラスな表情がソンベ焼きのアイコン的な存在となっています。
③ 薄めで軽い&大皿が多い(南部らしい実用品)
ソンベ焼きは、作りが比較的薄めで軽いことも特徴のひとつです。また、家族や友人と食卓を囲み、大皿に盛られた料理をみんなで取り分けるという南部ベトナムの食文化を反映して、大きめの平皿や深皿が多く作られてきました。軽やかなつくりは日常の食事でも扱いやすく、現代の日本の食卓でも非常に使い勝手の良い実用的な器です。
④ 焼成由来の「ポツポツ跡・歪み」も味になる
ソンベ焼きは窯の中で器を重ねて焼く伝統的な技法を用いるため、器の表面に「三つ目」と呼ばれるポツポツとした跡や、わずかな歪みが生じることがあります。これらは本来、陶器としては欠点とされるものかもしれませんが、ソンベ焼きにおいてはこれこそが手作りの証であり、唯一無二の「味」として愛されています。完璧さよりも、個体差がもたらす趣を楽しむのがソンベ焼きの正しい向き合い方です。
ソンベ焼きは何に使う?人気アイテム例
ソンベ焼きは、日々の生活を彩る様々なシーンで活躍してくれます。
普段使いしやすい食器
取り皿や小皿、平皿、どんぶりといった食器類は、最も人気のあるカテゴリーです。ベトナム料理はもちろんのこと、実は和食とも驚くほど相性が良く、白いご飯とおかずを盛り付けるだけで食卓がぱっと明るくなります。どんな料理も包み込んでくれる懐の深さがあり、毎日の食事を楽しい時間に変えてくれます。
インテリア雑貨としても人気
食器以外にも、花瓶や小さな壺、置物といったインテリア雑貨も人気を集めています。南国の空気感を持ちながらも素朴なテイストであるため、部屋の雰囲気を壊すことなく自然に馴染んでくれます。棚に一つ飾るだけでお部屋に温かみのあるアクセントが加わり、見るたびに旅の記憶を思い出させてくれることでしょう。
どこで買える?(ホーチミン・現地・日本)
お気に入りのソンベ焼きを手に入れるためのルートをいくつかご紹介します。
ホーチミンで買うなら専門店・セレクトショップが探しやすい
ホーチミン市内には、ソンベ焼きを豊富に扱う専門店やセレクトショップが点在しています。例えば「Tuhu Ceramics」のような現代的なセンスでソンベ焼きを提案するお店や、カフェに併設された雑貨店などは、観光客でも立ち寄りやすくおすすめです。綺麗にクリーニングされ、ディスプレイされた商品の中から自分好みの一点を選ぶ楽しみがあります。
ビンテージを探したいならアンティーク店も候補
より古い時代の味わい深いソンベ焼きを求めているなら、アンティークショップを巡るのも一つの手です。当時の空気感を纏ったビンテージ品は、絵付けの雰囲気や色の深みが現代のものとはまた異なります。個体差が非常に大きいため、もし気に入った柄に出会えたなら、その場で手に入れることをおすすめします。
日本で買う方法
ベトナムへ行く機会がなくても、日本国内のベトナム雑貨店や、器にこだわりのあるセレクトショップで購入することが可能です。また、オンラインストアを利用すれば、全国どこからでも注文できる場合があります。ただし、現地で流通しているような一点ものは数が限られているため、こだわりが強い方はやはり現地での購入が最も出会いの幅が広がります。
失敗しない選び方|お土産・自宅用それぞれのコツ
たくさんの器を前にした際、後悔しないための選び方のポイントをまとめました。
お土産なら「軽い・割れにくい・使いやすい」
お土産として選ぶなら、持ち帰りやすさを考慮して、小皿や取り皿、マグカップなどの比較的小さなアイテムが無難です。また、ソンベ焼きらしい鶏や金魚、花のモチーフがはっきりと描かれているものを選ぶと、ベトナムらしさが相手にも伝わりやすく、喜ばれること間違いありません。
自宅用なら「料理との相性」で選ぶ
自分用に選ぶなら、普段どのような料理を盛り付けたいかを想像してみましょう。和食が多い家庭なら、白ベースに青の絵付けが施された落ち着いたデザインが使いやすいです。一方で、ベトナム料理やエスニック料理を楽しみたいなら、カラフルな大皿などを選ぶと食卓が一気にエキゾチックな雰囲気になります。
チェックポイント
購入前には、フチの部分に欠けがないか、大きなヒビが入っていないか、テーブルに置いた時にガタつかないかを必ず自分の目で確認しましょう。特にビンテージ品の場合は、多少のダメージがあることも多いですが、それも含めて「味」として許容できるかどうかを判断の基準にしてみてください。
ソンベ焼きのお手入れ|長く使うための注意点
ソンベ焼きを長く愛用するためには、少しだけ丁寧なお手入れを心がけましょう。
基本的には普通の陶器と同じように扱って問題ありませんが、ソンベ焼きは吸水性が高く、貫入(表面の細かいヒビ)に料理の色や油が染み込みやすい性質があります。もし気になる場合は、使用前に軽く水に通してから使う、使用後は汚れたまま長時間放置せずに早めに洗う、といった工夫をおすすめします。時間の経過とともに少しずつ変化していく様子を「器を育てる」楽しみとして捉えると、より愛着が湧いてくるはずです。
Q&A|ソンベ焼きのよくある疑問
最後によくある疑問を解消しておきましょう。
Q1. ソンベ焼きはベトナムのどこの焼き物?
ベトナム南部の伝統的な焼き物です。かつて存在した「旧ソンベ省」、現在のビンズン省周辺の工房で作られてきた歴史があります。
Q2. バッチャン焼き(北部)との違いは?
北部のバッチャン焼きは歴史が非常に古く、ベトナムを代表する「王道の伝統工芸」としての格式があります。一方、南部のソンベ焼きはより庶民的で、自由でゆるやかな絵付けが特徴です。どちらも素晴らしいですが、ソンベ焼きの方がより南国らしい、日常の素朴な温もりが強く感じられる傾向にあります。
Q3. 「幻の陶器」って本当?
1980年代を境に多くの窯元が閉鎖されてしまったため、古い時代のソンベ焼きは確かに希少価値が高まっています。現在では、その伝統を守ろうとする新しい工房による復刻品や、大切に保管されてきたビンテージ品が中心となって流通しています。
まとめ|ソンベ焼きは“南部ベトナムの日常”を持ち帰れる器
ソンベ焼きは、単なる工芸品の枠を超えて、南部ベトナムの温かな日常の息吹を私たちに伝えてくれる器です。
鶏や金魚といった自由なモチーフ、手描きならではの柔らかな線、そして時を経てなお愛され続ける素朴な風合い。
それらすべてが合わさって、唯一無二の魅力を放っています。
ホーチミンの専門店や雑貨店を巡れば、きっとあなただけのお気に入りに出会えるはずです。
次のベトナム旅行では、ぜひソンベ焼きを手に取って、南部ベトナムの豊かな暮らしのかけらを日本へ連れて帰ってみてはいかがでしょうか。